フランス人形
鬱蒼とした森に佇む屋敷に
人の背丈のほどもある 巨大なフランス人形が
赤黒い椅子に腰をかけている
うなだれているように こうべを垂れて
手は後ろ手に 椅子を挟んで組まれ
菫色のロングドレスからは
小さなはだしの足がのぞく
足の指の一つ一つに
黄ばんだ球体関節がついていて
それが倒錯した色欲に僕を駆り立てる
ベールについた蜘蛛の巣を払い
人形の顔を一瞥すると
白粉に塗られた頬に
血が通い始めて赤らんだ気がした
ドレスに顔をうずめて
防虫剤とカビの匂いを目一杯に吸い込み
肺に充満させると
僕の局部に血液が集まるのが分かった
そして その様子の細かな仔細を
一方的にされるがままの
物も言えない人形に
お目にかけようと唾を飲んだ
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