郷愁を呼ぶ機械

郷愁を呼ぶ機械
これは暇を潰すためのおもちゃで
車屋のカウンターとか
病院の売店とかに置いてある
お金を入れて
赤いボタンを押して
目を瞑るだけ

取り留めのない懐かしさは
冷蔵庫の中に眠った
ジップロックの中の
カチコチのパンみたい

この機械はそんな記憶をランダムに
引っ張りだしてくれる
記憶になくても 機械が言うのなら
それは本当の記憶

僕は初めてお金を入れてボタンを押した
すると 視界がフィルムの写真の
褪せた色に包まれていった

ロッカーの中 閉じ込められて 
隙間からは 窓の外の青い空が見える
断続的に笑う声がして
どんどん叩いたり
何かをぶつける音がする
目に涙を浮かべて
いつになったら解放されるか考えていた

そうか 懐かしい記憶って言うのは何も
夕暮れ時を友達と帰ったり
親の車の中で眠ったり
そんなことばかりに限らないよね
ただ 僕はそういったのを期待してた

25/07/01 23:27更新 / 南米こむすび
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