完璧な思い出
夜の闇の中 祭りの光を背に
石畳の上を僕と君は歩く
お祭りには飽きたけど
それぞれの家に帰るにはまだ早くて
つい今気づいたけど
君の手はなんて小さくて
そして白いのだろう
温かい風が吹くと
黒いワンピースが揺れて
香水の匂いが鼻をくすぐる
なんて名前の香水なんだろう
尋ねるのは野暮な気がして
僕は黙ったまま
君が話すのをずっと聞いていた
二人は公園のブランコに落ち着いて
君はまだまだ部活や友達の話を続ける
相槌を打つたびに僕はうとうと眠たくなって
冷たいブランコの鎖が枕になりつつあった
その冷たさと君の声がとても心地よくて
この瞬間の隅々を完璧に記憶して
君にそれを写真みたいに渡せたらと思った
いつも思い出は美しさばかりが余って
真実かどうかなんてあてにならない
だから これは全部本当だったよって 証明してみたい
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