ギターの男
メイドがお盆を持って
駆けよってくるみたいに
風はいつだって何かを乗せてやってくる
そしてすぐに行ってしまうんだ
今まで出会った人たちをみんな覚えてる?
今日すれ違った人をぜんぶ覚えてる?
彼らはみんな行先を目指す風だった
ほら今もまたどこかで人が歩いてるよ
一体どこへ行くんだろう
そんな風に想像を巡らせると
それはすぐに妄想に変わる
勢い余った僕の妄想が
新しい風景をポロッと吐き出して
虫がたかるみたいに
僕はそれに駆け寄る それはこんな具合だ
僕は夜の砂漠を歩いていた
そしてギターの男とすれ違った
爪弾かれるメロディは
男の後ろ姿と一緒に小さくなっていき
最後は地平線だけが残った
その出来事が額縁の中の
キャンパスに描かれているなら
僕は美術館の中で1人
いつまでも立っていられるよ
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