海の見る夢

見知らぬ誰かの
涙や血潮を
つま先に感じて
鬱陶しかった
俺は海だった

砂浜をチロチロと舌先や
指先で弄んでいた
そうするのにも飽きた夜
嵐とつるんで
陸の全てを飲み込んだ
案の定 無理がたたって 腹を下した

胃の中でウジ虫のように 
蠢めいていた何十億の心臓は
次々に止まっていき
俺はそれらを陸に吐き戻した

ほどよく咀嚼され傷ついていた
筋肉の赤さと骨の白さが
桃色の肌の格子を隔てて
俺を睨んだ
俺は唾を吐いた

やがて 悪魔が嬉々としてやってきて
この星の人間の魂を全て
地獄へと持って帰った
俺が手を振ると
水飛沫がピシャっと音を立て岩を打った
悪魔は目もくれなかった


24/12/11 22:07更新 / 南米こむすび
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