乳房の木
森の奥をだいぶん迷い辿り着けば
乳房の木と呼ばれる大樹がある
旅人が訪れては乳房の木に体を寄せる
両の手のひらで大事そうに
乳を絞り出して
ありがたく口に含む者もいる
母に感謝するように
唇に含めば甘ったるい乳の匂いが
鼻をムズムズさせる
喉を滴り落ちる乳よ
なかには乱暴な者たちもいた
乳房の木が無尽蔵だったなら
良かったのかもしれない
お釈迦様のように慈悲に溢れ
無限を語れば幸いだった
乳房の木は心の中で
噂に聞く癒しの泉を思っていた
そして、己の自負心との狭間で密かに泣いた
旅人たちはひっきりなしに訪れた
いつか春風が吹くといい
乳房の木に服を着せるように
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