大好きなボタン
少女だった頃
若かった母は藤の洋裁箱に
上等な金色の布はさみと糸や針山以外に
袋いっぱいのボタンを入れていた
大小色んなサイズのボタンがぎっしり
形が四角だったり、変形だったり、
木のボタンや美しい貝ボタン、
革のクルミボタンや陶器の高級なもの、
絵が描いてあるのや、縁どりのもの、
それは様々で、幼心に宝石に見えた
畳の上に並べて
端から好きな順にしたり
色で分けたり、
何度も裁縫箱から取り出しては弄って遊んだ
あの太陽のさした明るい部屋の
幸せな少女の手遊びよ
こういう工夫をした変わった遊びを
私は沢山持っていた
そしてそれに熱中したあの安らかな時間よ
愛惜と共に私の中に何が残ったか?
そっと数えてみる夜更けだ
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