短歌を精霊流しせよ
舌傷む酔い覚めの朝何気なく雀が鳴いた舌切の罰
紫の水晶石にチリ積もり歳月に泣く凍えた氷
秋ならば忘れてしまう去った夏ドタキャンされたカフェの末席
淋しいと呟く代わりに踊りましょう秋の小袖をそっと握って
恋人たちひそひそ話する理由(わけ)は秘め事の花摘まないように
味付けを褒められたならスパイスの辛さを人生だったと割り切れ
猫住まう一国の王なり飼い主は民の暮らしを案ぜよ仁義
一億の総白痴化と言われたるテレビのあとにスマホの進軍
白けたる秋の心に火をつけて芋を焼くように努めて愛せ
追い詰めた窮鼠が爆発したならば猜疑心散る人の不幸よ
眼差しに信じてますと火を灯す素朴で煌めく無知の子供よ
愛などと簡単に言うべきでない背骨となりて我を支えよ
すきま風、肋(あばら)に抜けてスースーす花咲かせよう竪琴になり
悲しくて伏せたまつ毛に留まる蝶ちらほら飛んで仄かな人情
暮らしつつ静かに軋む舟となり繋がれたなら港の人いきれ
嘆く人慰めさする人の世はコタツに入る二人の如し
あの人に優しくできない罪を背負いせめて春を話題にしよう
死んだ人生き様灯す星になり暗き夜道を照らせ愛の痕跡
無駄な命などないのだと品物磨く古物商百円ショップに負けるな路地裏
さぁそっと森に秘密を埋めに行く小箱に眠るあの夕立を
TOP