海は呼ぶ
季節外れの
赤い鼻緒の桐下駄を
ペディキュアも塗らない素足に
引っ掛けて立っていた
夜の海は荒くぶぶいている
夏が終わった寂しさは
無くした黄色いバスケットのせい
手紙をたくさん入れた、
黄色いバスケットを無くしたの
何処に行ったの?
海は私を呼ぶのに
何も答えず
泡の波涛が散るだけ
キレイと思ったら勝ちなのよ
海には魔物が棲み
おまえから盗んだそれを
夜毎、海の底で食らうのだ
海は実は機械仕掛けで
魔物が食らった
情熱や純粋を燃料にして稼働している
海上の月はその秘密を知っている
月は伴侶の大地との約束を守り
ただ黙って、黙って、黙って
太古から、かくあれかし、と
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