アサガオ
ふとアサガオを思い出した
あれは小学生の涼しい夏の朝だ
私はレモンイエローのお気に入りのワンピースを着て
朝日新聞を小学校の脇の理科室の
ヒンヤリとした、
コンクリートの台に座って読んでいた
周りにはアサガオの鉢が紫や水色に咲いていた
すると、向かいの家から
男の声で
「おはよう!」
と聞こえた
見あげれば二階の窓におじさんが立っていた
「これ知っているか?」
そう言うと、おじさんは
前の当たりをブルン、といじった
パンツを履いていなかった
ブルブル震える心を隠して
目が悪いからよく見えません、
とのような言い訳をして
私はそこを立ち去った
もうそこには行けなくなった
アサガオを見るとその残念な記憶を思い出す
朝の一瞬に咲くいじましいアサガオよ
私の健康で愛おしい子供時代よ
アサガオに罪は無い
無邪気に咲き
束の間を精一杯に歌うおまえよ
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