ここは水に沈んだ谷底
ここは水に沈んだ谷底です
水底には小さな蟹が幾匹か
チロチロと動き
時折に泡を吐いています
呪いか
守護か
老婆の仮面を被った下に
少女の仮面を被り
その下に中年女がひっそりと隠れ
蟹の仮面を被り笑っています
そして蟹たちは泡を吐きます
谷底の壁には幾万の仮面が掛けられています
あなたはどの仮面を着けてもいい
ここは劇場となったのです
この谷の物語はダムの水の放水に混じり
河下に暮らす人々の罪の無さに溢れた心を
子供のような心をまっしぐらに探して
1枚の羽として
手紙のように舞い降りるのです
帰るべき野原があなたを呼ぶように
それを私は握手と呼びます
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