あのね
昔、インドのデリーから三日三晩列車に乗ったの
車窓がめくるめく友禅染のように
田園を白い牛がチラホラし
小さなサリーやルンギを着た人影が
朝のトイレを済ます姿も赤裸々だった
なんて美しい絵巻だろうと
夢中で言葉を奪われていた
ミニナイフでリンゴを剥き
食パンとお世話になったインド人家庭で
茹でてもらったゆで卵を食べ
車内を熱いヤカンを持ってチャイ!と叫ぶ
行商人から熱い一杯を貰い啜る
あれはもう三十年前
一杯のチャイは3円だった
それに友禅染ね
小学生の頃に軽部くんというかわいい男の子の友達がいたの
お父さんが友禅染の絵師だったのよ
あなたに甘えたくなって
どうでもいいこんな話をしたの
ふふふ
ごめんなさいね
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