記憶のバルコニー
子供の頃、広い赤レンガ風のバルコニーが家にあった
若かった母は張り切って
大きな鉢に柿を植えて
私の部屋からその陰影を
障子で楽しむようにしつらえてくれた
張り出した縁から青空に向けて
色とりどりの派手なペチュニアがぱちぱちと弾け
サーカスのように咲いていた
母は竹ひごを組んでヘチマと瓢箪の棚を作った
ヘチマは腐らせて筋を体を洗うスポンジに
中の水は化粧水に化けた
あまりに暑かった日
母がふざけて
赤いタイルの上に生卵を落とした
ちゃあんと目玉焼きになってびっくりした記憶だ
ホースで植物に水をやれば小さな虹が出て
太陽の光と七色の虹と飛沫がキラキラしていた
濡れた植物の芳しさよ
幸福ってあんなだね
弟とふざけた庭よ
だからいつの日か、
小さな虹を誰か、大切なあなたと見たい
そしてその小さな虹にそっと名前を付けるのよ
それは生きていることのちいさな祝福だから
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