生きる

生きることの畏怖に
私はコップ一杯の水に溺れる
誰か助けてください
そろり、そろり、とひび割れた、
水の漲る甕(かめ)を持ち歩く女です

生きることの愛に天空から羽が降る
それはふわふわと何より甘い
歓喜にひたぶる海は私の涙を喰らい
その冷ややかな水底に私を蔵した
私は海になった
蒼い私は幾たびも押し寄せては
漣(さざなみ)散らしてあなたを抱きしめる
あなたが愛を思い出すまで

痩せこけた少女が膝丸める永久凍土のシベリアよ
北極海のクリオネが集まっては噂する
「いつの日か、いつの日か、傷つけばきっとたぶん遠い物語…」
無念の最果てにまで肌をさするようにこだまして轟け
今という鴎の喝采よ

生きることの微熱に
私は夜のシーツに足滑らせて
時をあなたに傾げる砂時計になる
あなたの瞳に私が宿り
赤ん坊の産声を上げる時
朝日が昇り
千年の眠りから覚める

これは森の奥深く、
湖の底に眠る女の夢です
水底から光る太陽が私を温め
「夢みよ、夢みよ我が子よ、夢を孕み目覚めよ」
と囁くから





23/04/01 17:21更新 / 湖湖
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