出会い


突如降り出した雨に鞄を頭にして
駆け込んだ古屋の軒先よ

それは夏の夕立だ
雨は空気を洗い黄昏が満ちる
そして辺りに生まれたつぶつぶの露をキラキラと染め上げる

隣に雨宿りのあなた
ふ、と目が会って恥ずかしくほほ笑む

あ、雨が上がった
あ、ふわり、風が一陣、吹き抜けた
雨の匂いと草の匂い

ふわ、と季節のリボンが解けるよ
舞い上がるような幸福感の夕暮れ
露に濡れたピンク色のコスモスが黄昏に揺れている

ほら、あなたにニコリ

「今晩は。コスモスが綺麗ですね」

そんな風に知らないあなたと知り合ってみたい
りんりん、と鈴虫が鳴き始めて夕闇が
グラデーションで波打って濃くなっていく
金星が甘く西の空に上り指切りげんまん
心が赤い糸を結ぶお針子になる
貫き留めよう
生きている限り、と




23/03/26 01:07更新 / 湖湖
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