春はどぶろくを揺すり
春はどぶろくを揺すり
雨に濡れた土は匂い立つ
窓を開ければ
むわっと発酵した大地が私を誘う
草木の思惑、さざめいて
落ち椿の茶けた落涙が古色めく
ああ、わたしは生きた
そうため息をついて去る者よ
そうこうしているうちに桜舞
薄紅の精が
召され、召され、
と秘めやかに踊り狂い
その誉れはどぶろくの香と混じり
春の金襴緞子はしめやかに開くだろう
腐りながら歌い滅びては生まれる命の宴よ
春に興るならば切なくて
憑かれた亡霊のようにガツガツして
生きる愛おしさを持て余す
せめて服の袖で顔を隠したい
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