星には等級があり

星には等級があり
私は六等星だろうか、と疑う時
私は止めた煙草を吸いたくなる

あなたは愛してくれなかったね
そんな苦み
かつて煙草と私の唇と脳髄は
厳粛に排他し、人を追放し、
誰にも侵されぬ聖三角形を形作っていた

出生前診断でおろされる赤ちゃんの無念
美しく無く生まれたことの生涯年収の減益

存在の光弱く誰にも見出されない星の凍えよ

小さな屑星がつーと泪、
流星して闇の中を羽虫のようにさ迷うだろう
そんなか細い通信の震える声が
赤く糸となって宇宙に綾をかけるだろう

きっと語ってはならない寂しさ
誰もが耐える孤独が私を黙らせ
ハードボイルドの卵は割れた殻でケタケタと笑う
生コンクリートを流し込んだ壁に阻まれた
小さな膝を抱く人をそっと包んでいる

ある狂人は薔薇星雲のように革命を夢想し
宇宙の大伽藍に愛の祭典を描いた
胎蔵界曼荼羅、数々の仏は星で人だった
それはただ、認識の問題なのだ
そう気が付いたところでそっと私は淋しく笑った
私は今、気が狂ってはいない
昔、日本が武力を放棄する平和憲法を掲げる、
狂人にならねばならない、と語った男が居た
その男、総理大臣、幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)
が語ったことはそっと
私の胸に赤い御守りのように温かい





23/03/22 17:55更新 / 湖湖
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