靴下さん
絹の靴下なんて昔はあったようだけど
一年中できれば裸足が好きな私だった
寒すぎてそっと靴下を探す冬の夜よ
私を慰めるのはあなただけ
ぶかぶかの厚手の靴下やもこもこスリッパはユーモラスで
なにか装甲車になったみたいな心の援軍だ
JKだった頃、
高校でよく禁止された派手な靴下をはいてやったもの
反抗してはくことが目的になってしまい
ケバくてダサかった本末転倒の自分に苦笑する
遠い昔、黒くてセクシーな網タイツに憧れて
そのくせたいして足も長くなく太ももが太く
似合っていたか疑問の若い頃
装飾性よりも機能性に愛を感じるのは大人になったからだろうか
そんな哲学的疑問を舌で転がせば不足することを思う
私には靴下がある
そっと脱ぐ自由がある
靴下さん
猫毛や毛玉がついた生活臭のあるおまえよ
洗っては汚れ、洗っては汚れ、洗っては汚れ、
綺麗であることを保とうとする心映えで生きる
おまえという所有よ
おまえという利便よ
おまえに含まれる優しさ
クリスマスのギフト袋にもなるつましさ
おまえの見せる愛の代替品
私の脚をそっと守って
私は燃える眼でふわり、と夢想した
白大理石の湯煙たなびく大浴場で
ゆう、としてカウチに寝そべり
美青年に足のペディキュアを塗ってもらうことを
その大浴場にはすずろにカナリアが鳴いている
光がいっぱいに押し寄せる
そんな夢想を語り、私は本当の望みをそっと隠した
可愛い靴下よ
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