旅のウルトラC

その頃、私は若く美しかった
カンニャクマリの浜辺は夕暮れだった
潮の匂いが満ちては鼻先に渦を巻き
風がたおやかにあおる

私は海際に立ち、
金のスパンコールが縫い取られた、
オレンジ色の透けるストールを風に流していた
そっと夕暮れにふわふわと舞う風を見ていた

呼吸するように頑是なく嬲るように、
駄々をこねるように愛撫するように囁く風よ

すると向かいから
マザーテレサと同じ白地に蒼い線のサリーを着た修道女が通り、
私の姿を見ると、手を合わせて私を拝んだ
私は何かわからなかったが小首をかしげてお辞儀を返した

その後、のちの夫の親しくなったインド人の男に
その修道女の話をした
すると、男は目を輝かせて語った

彼女は君の姿の中に神をみつけたんだよ
だから拝んだんだよ
それは特別な瞬間だよ
生きているってそんなだよ

さあ、頬を撫でる風をめでよう
風が頬に子リスのように弧を描いているよ
キラキラと煌めく、残照の金の記憶よ












23/03/12 01:18更新 / 湖湖
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