雛祭り
私はもうおばさんの歳なのだけれど
中年娘のためか、心映えなのか、
老母が小さな小さな胡桃サイズのお雛様を飾ってくれる
子供の頃は祖母が奮発して贈ってくれた、
壮麗な八段飾りのお雛様を若かった母と張り切って飾ったものだ
大きな黒い鉄の階段を組んで、緋色の布を張り、
艶やかなついたてを飾り、雪洞を左右に灯し、
お雛様やお内裏様、三人官女、右大臣左大臣、
五人囃子たちの顔の和紙をそっとはぎ、
その端正なお顔を眺めては
さあ、お久しぶり、また会いましたね、
お手元に和歌の紙と筆を握らせ、烏帽子を整えて被らせ、
お雛様のお嫁入り道具にうっとりし、
引き出物を理解し、左右の桜の花と橘をしつらえ、
さあ、点灯して、艶やかな宮廷ロマン、完成!
子供の頃は十回は結婚したい、と言っていた、
底抜けに明るい子供っぽい少女だった私だ
ばかね
今は小さくなったお雛様をちらっと見て
人生の怒涛の川を振り返り、
それを飾ってくれる母の心に感謝する
サクラチル
そんな電報もこの世にはあるのだから
人には見えない冠を被り、しずしずと行こうじゃないか
わらわは姫じゃぞよ
なぁんてね、ジョークじゃないの
ふふふふふ
ごきげんよう
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