春よ来い
春めいて笑いながらソフトクリームを食べて歩く父子よ
自転車に乗って母と税務署への坂を上った
風の強い日だ
ややこしい幾つもの書類を集めて
お土産にパン屋でアーモンドパンを買い
コーヒー屋さんで一息した
きもの屋さんで和風小物の薬入れと化粧ポーチを
三割引きで買い、また自転車に
春風が強いから肩が凝るし目がしおしおになって
でも何か心が浮き浮きした
すると春らしいサーモンピンクの上着の若いお母さんが
赤ちゃんを揺らしてあやしながら、
鉄道のフェンス越しに通りすがる電車を見せてやっていた
ポッポだよー、いい子いい子
ぽんぽん、と背を叩いてはなぜて
あのお母さんは春めいてそぞろなのかな
優しいお母さんだなぁ
育児の孤独と疲れにほてる体を醒まして
風の中電車を見ているのかもしれないな
それは切ないけれどこの忙しく走る大企業や会社の世界で
あのお母さんは春風に縁取られて優美だ
電車を隣の世界にして
そんな風に人は気づかず背をもたれあったり
すれ違って、心が歌うのだ
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