雪山でね、つれづれの夜
雪山に朝日が昇ると
白狐が頬を染めたように
雪原が朱に染まる
それをあなたに伝えたかったの
昼間の太陽を浴びると
樹氷は白銀の中
時折七色にきらめく
それをあなたに伝えたかったの
ボブ・マーリーの「ノーウーマン、ノークライ」のなかで
粗末なコーンミールポリッジを食べて
分け合っているシーンを思い出したの
人らしくありたいと思う欠けた心の夜なの
はっさくを一つむいて食べたの
今日は多喜二忌だそうだ
みんなでそれについて囁かなきゃいけないね
警察に嬲り殺された文学者の悲痛は
一般市民にいかに生きるかを問うているから
それでもう十分だから
詩人や文学者を人身御供にする時代は
血の歴史よ
多喜二にはっさくを分けてあげたかった
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