勿忘草

私を胸痛く覚えてくれている人はいるだろうか
棄ててきた人たちを思う
後悔の薪をくべて明日の賢明にしたい

時の地平線に踊る勿忘草が
ため息の風にそっと青く揺れる夜更けよ

悲しかった話を聞いてください
私を慰めてください
酷いね、辛かったね、頑張ったね
私は傷ついたまま月日が過ぎて
さざれた石像となった
そんな泣き言を今夜は許せよ

親友に嫉妬されて仲が終わった
あなたは愛されているのに私は愛されない
そんな怒りは私を無口にさせる
全ては孤独だ、とあなたに向けて唄った
階段の上の満月が凍えて光っていた

貢いだときは悲しかった
あの人、病気で貧しかった
ボロアパートの廊下に買い物を置いたものだった
愛よりも優しさよりも
食欲のように性欲がぎらついて虚しさで吐き気がした
定食屋さんで男の分を払った
おかみさんが男をあからさまに馬鹿にしたことは
私を傷つけるには十分だった
ロマンスという虫が踏み潰された青春よ

千のガラスの破片のちいさな一つです
いわば刀傷は古いものも新しいものも
肌に騒ぐものですから
あまりひどいと語れないものです

海は夜、私を待っているか
待っているだろう
おまえは私を弔う、私の酒だから
ギラギラとした星を頭上に
恐ろしさを巻き上げて
それでいて荒々しい恋人のように






23/02/07 01:55更新 / 湖湖
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