あれはいつかの光
ひんやりとした壁の内側に夏の灼熱を避け
その小麦色の肌に美しい豊かな髪をした少女、
ルビナ=ルビアは裸足で部屋に寝ころんでいた
えく、どー、てぃん、ちゃー、ぱーち…
えく、どー、てぃん、ちゃー、ぱーち…
少女は一生懸命に数を数えている
そっと覗き込んだなら
プラスティックの櫛の目を何度も気ままに数えていた
その午後の微風にくるまれた
無駄なようでたおやかな時間よ
私はなんて美しいものを見たのだろう
あのインドの少女ももう結婚しているだろう
インドでは夫がよくバイクの後ろに女座りの妻を載せていた
横顔の妻の首から風に透けたストールが揺らめいて
はためいていたその美しさよ
後ろに乗る妻のサンダルにペディキュアが光る
その女の子供が今は櫛の目を数えているかもしれない
あの暑い南国の日差しの木漏れ日の中で
頬のおくれ毛を風に巻かせて
私はあなたにこの世界の秘かな欠片の
そんな話をしてみたかったのだ
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