夜の星がキンと冷えて
冬の夜空は冷え凍り
星がギラギラ
夜空の天蓋のバーテンダーが掌の上で氷を丸くクラッシュして
「これは地球です」、と語る
お月様も凍り付きジンライムが匂う夜だ
氷が鳴って歌い、
グラスで回りしなを作れば、
溶けては時の背を撫でる
大人の孤独者の背を
猫背の猫のようにあしらって撫でる
人生は酔いどれ船だと書いた詩人もいたが
渡りきるならば何を酒とする
昔、私をシャルドネ、と呼んでくれた老詩人がいた
あなたは私の酒
愛は酒
酔いしれて小さな春を興す力よ
そんな例えもいい
喜びと光と香華が漂い
いつか春の物思いを愛の岸に吹き寄せるといい
海風が耳をくすぐって
「おまえを待っていたよ」
そうきっと言ってくれるはず
海の底に鍵が眠り
春の扉はほほを染めて待つだろう
どこかで誰かの誠実がそっと涙を流して
その亡骸が鍵に変わったのだという
そんな海の底の泡の呟きを私は
冬の凍えた星の下に聴いて夜の散歩をした
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