猫が

パソコンに向かっていると
後ろで猫がぴちゃぴちゃ

音を立てて水を飲んでいる
ひひひ、
君の気配はなんてかわいいんだ

君のご飯は一日に二回
私の手のひらで一握りしただけのカリカリを二回
君はせっせとそれを齧る

胃腸のお薬は一日に2回
薬を食べればそのあとにチュールを貰える
そう学習した君は
食卓の上に出された薬の欠片を
そのままぺろり、カリカリする
先代の愛猫は吐き出したのにね

もう薬を食べたのだから
チュールは上げなくてもいいんじゃないか
そう、ちらっと魔がさすが
いやいや、信じているんだからあげなくちゃ
これはお約束の絆でしょう
そう思いなおしてチュールをあげる

胃腸が少し強くなったかな
私は君のうんちの状態をチェックする

体が丈夫で安定し始めると
君は世界に恩寵を感じるんだね
幸せそうな所作になってくる

生きていて幸せ

君はキャットタワーの上でくねくね
声を掛けられて身を捩らせくねくね
人の脚をはたいて逃げる鬼ごっこ浮き浮き

それは病気の人間と同じだ
生きとし生ける者はみな同じ

命って同じだな
牛も鶏も猫も犬もライオンも
もしかしたらカナブンやゲジゲジやアメンボもそうなのか
杉や桧葉やモミの木や
芹やコスモスや紫陽花も
全ての樹々や花々も動物もみなきっと愛を唄っている
そんなオーケストラがこの世界の半月の顔だ

昔、大詩人の谷川俊太郎さんが
地球は恐ろしい笑顔をしている、と言った

半月の暗がりに戦争や飢餓や憎しみも辛苦もあるだろう
盗みも小児性愛も臓器売買もあるだろう

私は清流の美を思いながら、ふ、と
満月のような笑顔の平和な女の顔を未来に想像する
オーケストラの熱唱のように






23/01/07 16:44更新 / 湖湖
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