ザリガニ
ある日、
目覚めると手がザリガニのハサミになっていた
なぜそうなったのかは分からない
いつかのバルタン星人のようで
悪役にさせられたような切ない気持ち
チョキチョキ
ザリガニのハサミだと握手ができない
あなたの手を傷つけてしまうよ
誰のことも触れないのかな
チョキチョキ
淋しくなったのに見かけは滑稽なだけ
チョキチョキ
仕事もできない
私には持つ指の力が無いから
チョキチョキ
私は役立たず
生産性の無い人は価値が無い
生産性の無い人はキライ
そんなことばで踏みしだく巨人の風がザリガニを追い詰める
ザリガニは真っ赤っかになった
私はザリガニ人間
このハサミの手を何か役に立てられないかしら
チョキチョキ
海に恋い焦がれたからザリガニになったのかな
これは何かの罰なのだろうか
罪を着せないでよ
チョキチョキ
あんた、私が嫌いか
髪の毛ぐらいは切ってあげられるよ
紙吹雪も作れる
空が曇って低く垂れこめている
私はこのハサミでチョキリ、と空を切り取り
そっと宇宙の深甚の青を覗いた
かくれんぼする子供のように
まあだだよ
そんな声を聴いた気がした
あなた、まだですか
あなた、
私を待たせないで
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