雪国の記憶
子供時代は雪国で暮らした
よく冷えた朝はつららが大小、
軒下にたくさんぶらさがり
ぽきっと折って剣にして遊んだもの
スキー場でリフトで足をぶらぶらさせて
左右に広がる樹氷の白いキラキラ
あれこそ天然の宝石細工で
春になれば消えてしまうからこそ美しい
息をひそめて光りの樹氷に迎えられ
眼下の雪原は処女雪のまま
そこにぽつぽつと兎の足跡を見つけるワクワク
スキーの板が流れて
僻地に迷い込んでしまい
途方にくれそうになった時
林は静まり返り
無人であることが空恐ろしく
空気はピリリとしん、と寒い
一緒に来た父の友人の息子さんが
見つけ出して助けに来てくれた
お兄さん
助けてくれる人って勇敢で
行動がハンサムで
少女だった私はドキドキした
街も野原も屋根も
雪が世界中を覆って辺りが真っ白な中
柿の木だけが赤く灯っていた
あの炎の鮮烈よ
それは魂のように
TOP