青春の一足

二十歳のころ、
惚れたかな、真の理解者かな
孤独を持てあました若者の私よ
少女は花屋でオレンジの薔薇を山盛りに買い
花束を抱えて新幹線に乗った
さながら男装の麗人だね
男に薔薇を贈る気概はそれ一度きり
赤い薔薇にしなかったのは
性愛という魔境にまだ一歩足りなかったから
友愛のオレンジ色が愛と重なって初恋は友情の色をしていた
満ち満ちて訪れたのにあなたは留守
ご両親とお姉さまが家中に薔薇を飾ってくれたよ
画家のお父さまとあなたが作ったヒノキの風呂でそっと息をした
梨園のそばの小川で泣いてそっと顔を洗ったよ
柴犬を連れたお父さまが泣く私を見て狼狽していたよ
傾斜のある野原には貧乏草が一面に白く繁茂していたよ
青春よ


22/12/13 10:49更新 / 湖湖
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c