歳月人を待たず
安宿で風呂に入りスッキリ
濡れた髪をぱらつかせてベッドにごろり
スマホから昭和歌謡を流せば
過ぎ去った明るい子供時代がどっと脳裏に溢れ
私は思わず啜り泣いた
失って気づく平生の愛よ
私は少女で
赤い絨毯の上に埃が舞っていた
父のステレオでオールディーズが鳴っていた
夏の縁側で寝転んで腹に氷を滑らせて遊んだ
私の美しい白猫に鰯を沢山焼いてやった
アリが列を作り砂糖壺に渦を巻いていた
母がニコニコ笑い
まだ父が許されていた頃
病もなく
仲良しだった家族の群像よ
母が独りで石を運ぶ女だと気付かない少女よ
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