セミの声だけが残る

玄関が空いている
枯れた虫の匂い
誰も寄り付くことのない部屋
セピアの遺影
埃の足跡

横たわる彼
もう何も語ることはなく
その彼はじっと向こうを見ている

頼ることも
助けを呼ぶこともなく
彼は孤独を選び
孤独に生きて
私たちの知らない間に
そのろうそくの火を
ふっと消していった

彼の行方は誰も知らない

25/06/19 11:01更新 / 幼い春
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