昨日、何も食べなかったら良かった....。

下に落ちれば、即死。
そんなことが、容易に想像がつくビルの屋上で。

最後、瞳の奧に映った世界は──好きな人が、私を突き落とした光景だった。

 


落ちる。

落ちる落ちる。

落ちる落ちる落ちる。


空気抵抗をもろに受けた、はだけた部分の肌が物凄く痛い。
恐怖よりも、苦痛。

何秒後かには、それよりも大きな死の痛みがやってくる。

きっと、私が人間としていられるのは。
あの黒く湿った地面に、叩き落ちるまで。

人が人でなくなる瞬間は、悲しいほどの醜さが伴う。
 
私の脳裏に浮かぶのは、押し花のようにひしゃげた肉の塊。
死んだ人体など所詮、人が毎日食らいついている動物の肉となんら変わらない。

 
それに加えて。
こんなに高さのある所から落ちれば、身体から内臓が溢れ出て汚くなるだろう。
 
嫌だな。
 
こんなことなら。
昨日、何も食べなかったら良かった....。

 


 


24/02/14 22:11更新 / 那須茄子
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