微炭酸
すれ違うたび膨らむのは
シュワシュワ弾ける泡
君との距離と淡い期待
飲み干せなくて
ただ見つめてるだけ
校舎裏の古びた自販機は
いつもと同じ透明な炭酸水を出す
冷えたボトルを握りしめ
「またね」と笑うその声で
ふと我に返る
僕だけに向けてほしいと願う
曖昧な季節に閉じ込められた
僕の恋は賞味期限切れのまま
自転車で追いかけた夕焼けみたいだ
オレンジに染まる横顔は
あまりに綺麗で言葉にできなくて
ただ息を止めるしかなかった
夏の終わりに降った通り雨を
二人で走って
濡れたTシャツで
はしゃぐ君に
「この時間が止まればいいのに」なんて
唱えてしまった
透明なまま嘘をついた
本当は君の全部が欲しかった
だけどそんなこと言えるはずない
カシオペア座が瞬く夜
ヘッドフォンから流れる歌は
いつもより少し切なく
ただ見ているだけ
しまいには全部全部
泡みたいに消えて
残るのは微炭酸の味
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