あたらしいすみか

今日で23回目の朝

レースを刺す日差し
夕暮れのあやめ色
電線越しの月

どれもあたらしくてなつかしい

わたしはここに来たかったのかもしれない
ここに来るために船を漕ぎ続けたのかもしれない

大らかな時間にとぷり、と足をひたしてみる
あたたかい水のようなそれをやさしく蹴りながら
中へ
もっと奥へ

頭よりすっかり上に水面があるところまで来たら
あんなに鳴り響いていた声が嘘だったみたいに
きこえない

鳥と風と自分の音だけ

あとは…時々、冷蔵庫の鳴き声

それだけでこんなに充ちる

『これが欲しかったんだ』

口に出すと夢みたいにきえてしまうかも

それでもこの台詞のかたちをゆびでなぞるのをやめられない

とがめられるかもしれないとおもいながら
たしかめるように何度も

胃のてっぺんのあたりがぶわり
ふるえる

晴れ晴れしさに息が詰まる

見つけたきらり、光る石を
誰にも後ろ指をさされないように
三日月みたいな目にさらされないように

ここにそっと隠す


24/11/07 14:57更新 / 五日
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