空っぽをください
空っぽをください
昨夜の雨は、突然振り始めたらしい
家の前の柔らかい土は
こうして大きく口を開けている
空っぽをください
読み終えた本を捨てて
飛び出した部屋、持ち出した靴は
こうして大きく口を開けている
空っぽをください
冬をお迎えするマグカップ
冷めた牛乳も、温かいコーンスープも
こうして大きく口を開けている
空っぽをください
ひとしきり通り過ぎた怒号とか
昨日まで苦しかった胸の内とか
こうして大きく口を開けている
空っぽをください
そう呟いたずぶ濡れの私
それをかき消した、昨夜の雨
こうして、あなたを見つめていた
空っぽは、何かが満ちる予感だから
空っぽは、何かを優しく受け止めるから
空っぽは、叩くと音がする
空っぽは、まるで昨日の私みたい
空っぽをください
あなたの、その空っぽをください
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