空っぽをください

空っぽをください

昨夜の雨は、突然振り始めたらしい
家の前の柔らかい土は
こうして大きく口を開けている

空っぽをください

読み終えた本を捨てて
飛び出した部屋、持ち出した靴は
こうして大きく口を開けている

空っぽをください

冬をお迎えするマグカップ
冷めた牛乳も、温かいコーンスープも
こうして大きく口を開けている

空っぽをください

ひとしきり通り過ぎた怒号とか
昨日まで苦しかった胸の内とか
こうして大きく口を開けている

空っぽをください

そう呟いたずぶ濡れの私
それをかき消した、昨夜の雨
こうして、あなたを見つめていた


空っぽは、何かが満ちる予感だから
空っぽは、何かを優しく受け止めるから
空っぽは、叩くと音がする

空っぽは、まるで昨日の私みたい

空っぽをください
あなたの、その空っぽをください

20/01/20 23:39更新 / アンタレス
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