雨を憎んだ日の記
こんなにも豊満した世で
こんなにも凍えながら
大人の雨を知るなら
美しいバラアド
美しい日本語
美しい潮騒
すべてに無知でありたかった
悲しいとき
美を心の底に置き去りにして
血を流してみる人がある
そのまま痛覚に目を覚まされる人もある
此の世という幻影から
大人の降らす大雨を子どもが浴び
子どもの流す涙を飲んで大人は雨を降らす
甘苦い水滴は良薬か
孤独に自ら雨を降らし それを浴びる子もある
雨はからだを満たした
体だけを
雨はこころを殺めた
心だけを
心に傘をつくってやれるのは
文化の恵に限ると思う
それでも心は雨に溺れ
美を置き去りにしたがった
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