褌とインバネス
褌が出てくる本を読み
知らないこともあるもんだ
親父の代までは褌で
六尺なんか締め方を知らない
この街の夏祭りのお神輿では
いなせな若衆たちが法被の下に締めている
わたしのようなメタボでは
六尺で足りるのか
そういえば
中学生のときだった
祖父の褌を借りて締めてみた
あれは越中だった
夏は蒸れないで金玉は爽快
まだちん毛も生えていない少年が
そうしていたずらに締めた越中褌
そうそう
それとわが家にあったのがインバネス
沖縄で戦死した叔父が残していったもの
婚約者までいたのに
召集されて帰らない
その大島紬の浴衣もわたしがもらい
インバネスは冬に雪の中を
学生服の上に羽織って
わざと雪道を歩いてみたら
年寄りたちは振り向いた
古いものが好きな子供であった
それが古本屋にもなった
骨董品が好きで
わが家の歴史の残滓を見つけては喜んだ
叔父の生き姿を思い浮かべおふくろは
生きていたらおまえと同じ年なんだがと
よく似ていることを言われたら
嬉しいような悲しいような
褌とインバネスは時代でなくなり
それでもあれは男のスタイルとしては悪くない
またいつか復活してこないか
男は男を取り戻せ
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