苔ティッシュ

いま苔が脚光を浴びている
それまではどこの道路脇にもあったただの苔が
苔にされたと怒る
いや虚仮にされたか
町の隅っこに隠れていたものが
人気沸騰
それは盆栽人気で外人にも受けてから
苔テラリウムなど
一躍表舞台に出てきたのだ
苔は可愛い
よくよく見たら苔ティッシュ
あまり可愛いのでつい写真を撮る
すると恥ずかし気な苔たちも
苔ファンたちに囲まれて
ずっ苔る
おれたちはただの脇役なんだ
それがいつから主役抜擢

マンホールの蓋にも
排水溝の脇にも
日陰の陰湿なところには
苔だらけ
じっとしゃがんで観察したら
それはそれで小さな花もつけ
ひとつひとつがちゃんとした花園で
小さな宇宙を形成していたなんて

苔むすまでと国歌にもあるが
苔がむすには長い時間がかかる
それほど静かな動かないところでないと
転がる石には苔は生えない
世の中は動いている
目まぐるしいほどに
だからか
われわれが石庭の苔むす静の世界を
眺めていると落ち着くのは
不動の宇宙がそこにあるからか
あまりにも急速な現代から
足元に目をやると
そこに苔の静かな世界があるなんて



24/06/30 00:11更新 / キム ヒロ
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