海岸道路
湘南の海岸線をずっと通る海岸通り
葉山から逗子鎌倉江の島辻堂茅ヶ崎平塚大磯小田原と
一直線ではないが
そこを走ったり歩いたりドライブしたり
海を意識してずっと旅をしてきて
いま辿り着いた街だ
いろんな出会いと思い出が張り付いて
そんなこともあったなと
青春の場面がそこかしこにある
あの人はどうしたろう
名前もすでに遠くなり
半世紀も経ってから
近くの海辺の街で暮らしていたなんて
ひとりの少年が
電車賃もなくひたすら
七里ガ浜を歩いていたり
腹がいつも空いていた
バイト代はすべて思う人のために費やし
住んでいた横浜から一号線を歩いては
あの人のいた鎌倉を目指していた
海岸道路にはそんなふて腐ったポーズの少年の
歩く背中があった
老いたわたしはその海岸線を
追いかけるように歩いた
すでに孫のような年だが
あいつは片思いを離れた電信柱の陰にいて
ただ傍にいたかった寂しいやつだった
その彼の肩を叩いてやりたい
海岸道路の景色は変わる
海だけは同じ顔で光っていた
歩くことで疲れさせ忘れさせ
そんな
おまえはわたしと同じだな
いまもそれは変わらない
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