饒舌の春
沈黙の春もあるが
それは悲惨な未来で
いまは虫も鳥も植物も
春真っ盛りに全開している
鳥という鳥が鳴き
虫という虫が飛んで這いまわる
花という花がいまとばかりに咲いて
目が回る忙しさ
おしゃべりな春は騒がしい
そんな春の饗宴を
わたしは写真を撮るに動き回る
いましかない
いましかないものを
それは年年の春ではなく
いまのいま
この年の春なのだ
一年一年これが最後と生きているのは
わたしも気分は一年草
蠢動の春
一斉に旅する春
埋もれていた長い冬から解放されて
ようやく人々は羽ばたいた
出たり入ったり飛んだり降りたり
目まぐるしいインバウンド
生きているものはいつもそうして忙しい
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