憑依 ぼくの中に猫がいる

幼少のころに
家に住み着いた猫が悪さしたので
祖父が頭陀袋に猫を入れて
川に捨てに行った
それを見ていたわたしは
可哀相なと思った
そう思えば猫が乗り移るとか
それからだ
夜な夜な寝ていて夜驚症
突然むくりと起きては猫踊り
家人たちはまた始まったかと
泣いて猫の真似をするわたしをなだめた
憑依する幼児はきっと猫が憑りついた
祖母は山伏に祈祷をお願いする
仏壇に祭壇をこしらえて
その前に寝かせられたわたしの
頭から足先までぽこぽこと叩き
火打石で火
それから呪文
猫憑きを追い出す儀式に
小さい姉はぽかん
それから祖母から渡された懐紙に包んだ塩と煮干し
それを川に捨ててこいと
わたしは猫を殺した向かいの川にそれを捨て
戻ったら祖母から塩をかけられた
どうしてそんなことと悲しくなる
だけどその夜中の猫踊りは続いた
大きくなるとしなくなる
それでも時折いまも
わたしの言葉に猫が出る
そうだニャ
手で顔を撫で
オリーブオイルを舐めて
猫好きは昔から
歩いていると猫が寄ってくる
孫は言う
じじはどこか猫だねと
そうか
正体を見破られ
にやりと笑う

25/12/01 07:58更新 / キム ヒロ
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