手元が狂う 足元が狂う
薬をこぼす
段差につまづく
なににつけても
老人は幼児と同じ
あらら
またコーヒーこぼして
また転んだの
これは前にはなかったことだ
なにが自分に起こっている
手元が狂う 足元も狂う
五感と肢体の感覚が
自分のものでないような
それで掴めていない
足も思ったより上がっていない
寒さ暑さの体感も
どうも怪しい
どこかしこおかしくなって
心のブレーキとアクセルを
踏み間違えてパニックに
ひょっとしてこれは
霊魂離脱の前兆か
やがて死ぬのに
もう魂は離陸準備をしているとか
長年世話になった肉体を
古くなったら捨てて
飛んでどこかに浮遊する
今度はなにになろうかな
目も悪く耳も悪く
よくなるものはなにもない
人間が壊れてゆく
ほら
ぼろぼろと崩れる音がする
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