老いの坂
老いの坂とはいう
どんな人にもやってくる急峻な上り坂
それには杖もいる
手すりもあればいい
よいこらしょと掛け声で歩く
なんだ坂こんな坂
なんだ坂こんな坂と
おんぼろ機関車は坂を走る
おいおいと呼び止める声がする
老いとはわしのことか
無理するな
ゆっくりゆっくりと一歩ずつ
あの世の山頂まで登ったらええ
須弥山の山の上には何かある
それにしてもまだまだ続く上り坂
へこたれてたまるかと老体は
奮起して峠をひとつまた越える
70の坂 80の坂
それを壁だという
人生降りたのに
下り坂のつもりが騙された
老後は登り坂であったなんてな
それはきつい坂
途中でバタバタと斃れている
友たちの屍を踏み越えて
どうして長生きする意味があるのか
ふうふうと腰に手をあて
息切らし
生きるのはこんなにも大変なこと
わしも路傍のしゃれこうべになりたいわい
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