これはママの道だね
孫たちのママが連れ去られて
何か月が経ったのだろう
突如いなくなっても五歳児は何も言わない
ママのことを言うのはタブーのように
ある日車で保育園に送ってゆくとき
孫は曲がり角で言った
この道はママの道だね
そうだ それまではその道の先のワンルームで
ママは子供らを追いかけてきて暮らしていた
お姉ちゃんたちと手をとって仲良くいつも夕つかた
ママのところへ晩飯食べに行っていた
どこかに遠慮がある子
ママとじじは仲がよくないと
そう思っているかのよう
言ってはいけないと口を噤む賢い子
後三年は出られない
孫もそのときはもう小学二年で
姉たちは高校生
子供の成長も見られないとはな
息子と部屋の荷物はうちのベランダに運び
清掃して明け渡した
あれは夏の出来事
いまは秋から冬へ
いきなりいなくなった人の痕跡が
曲がり角から真っすぐに伸びる道にある
それはかなしいスティグマのように
孫の目にはいつまでも焼き付いている
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