これはママの道だね

孫たちのママが連れ去られて
何か月が経ったのだろう
突如いなくなっても五歳児は何も言わない
ママのことを言うのはタブーのように

ある日車で保育園に送ってゆくとき
孫は曲がり角で言った
この道はママの道だね
そうだ それまではその道の先のワンルームで
ママは子供らを追いかけてきて暮らしていた
お姉ちゃんたちと手をとって仲良くいつも夕つかた
ママのところへ晩飯食べに行っていた
どこかに遠慮がある子
ママとじじは仲がよくないと
そう思っているかのよう
言ってはいけないと口を噤む賢い子

後三年は出られない
孫もそのときはもう小学二年で
姉たちは高校生
子供の成長も見られないとはな

息子と部屋の荷物はうちのベランダに運び
清掃して明け渡した
あれは夏の出来事
いまは秋から冬へ
いきなりいなくなった人の痕跡が
曲がり角から真っすぐに伸びる道にある
それはかなしいスティグマのように
孫の目にはいつまでも焼き付いている

24/11/29 10:04更新 / キム ヒロ
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c