秋の薔薇園の迷路から
春の華やかな季節の薔薇よりは
秋の淋しさが咲き残る薔薇がいい
迷路のようなガーデンで
薔薇の名前を探している
あなたの名前は見つからない
女王様でいられたあなたも
薔薇には登録されなかったか
気品ある花の凛として立っている姿に
それでもどこか花びらが枯れかかり
年老いているのは隠せない
棘も若いときよりは刺すものもなく
近寄る手もいまはなく
傾いてゆく光のやわらかな
力なき微笑みに答えるように
首を傾げている
もうすぐ花という花は終わる
庭園は長い冬に入り
薔薇園は眠りの休息に入る
それまでのわずかなぬくもりに
花としてのヒロインの舞台を
演じ切る最後の美しさ
散って終わるか枯れて死ぬか
残酷な女王のラストシーンに
せめて歌にしてとどめよう
あなたのいない花園の
つる草のアーチが閉じるまで
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