公判の朝

青森の裁判所ではいまごろ
孫たちの母親の公判が行われている
関係者は少ないから傍聴もないのか
弁護士からその様子が電話で
息子に来る
原告と被告だけの淋しい法廷であったと
後二回の裁判で刑は確定する
それでも初犯だから
そんなに長くは入らないだろう
拘置所から刑務所に
半年で出てくるか
一年かかるか
それによってわたしの処遇が決まる
子供らも会いたがり
ママはどこにいるのとたまに思い出す
小さな子のためにもどんな母でも母はいる
戻ってきたらまた一緒に暮らしたらいい
そのときはわたしは自由放免で
ようやく家族から釈放される

わたしもかつて被告席に座った
破産事件で親子で座る
その地裁の雰囲気が蘇る
あれは青森の冬だった
公判は春までには終わるだろう
どんなに雪が降っても
きっと来る春の明るさ
それまで獄中に子供らはせっせと手紙を書くだろう
わたしは本の差し入れで
心入れ替えてもらいたい
罪は消えないが雪は消える
どんな人にも温かい日は来る
それまでの辛抱だ

公判の朝
どこかで罪人を思う



24/10/27 07:43更新 / キム ヒロ
いいね!感想

TOP


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c