津軽のウエストコースト

秋晴れの休日に
姉妹と車で津軽の西海岸に走る
岩木山の裾野を廻り
りんご園の赤と黄色がたわわに実る
農道を走ったら
海が見えた
そこから海岸段丘の続く
奇岩や磯浜の日本海の海岸線を
快い風を感じて走る
土曜日でも車も人もいない
日本一の大銀杏を見て
千畳敷の広い岩のテラスを歩き
わたしの好きな行合岬の先端まで

草はらを歩いた
なにもかもが眩しい
久方の海のような
それは住んでいる湘南では
とても見られない澄み切った海と自然ありのまま
だいぶ前にはキャンプもしたな
子供と孫の小さなときに
シュノーケリングしたところ
サザエにウニがいくらでもあったころ
いまは夏が過ぎ
遠い昔話のように
行き合う船を眺めて
年老いた姉妹たちと荒波と断崖を
懐かしむように佇む

ここはふるさと津軽の海
こんなにもいいところなのに
どうしてふるさとを捨て
出稼ぎに出て帰らない
たまに見るふるさとに
甘えてみたいから
わがままは許されよ

どこかしこ明るい
おいてけぼりのふるさとのウエストコーストは
手つかずの自然のままに
いつまでも取り残されよ


24/10/13 07:02更新 / キム ヒロ
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