ふるさとの夜の町を歩いて
ここはまぎれもないふるさとの町
久しぶりの友人たちとの飲み会で酔って
青森駅からずっとホテルまで歩いた
夜の歓楽街はいまは死んでいる
人も歩かなければ車も通らない
スナックの看板は消えている
昔飲んだ店の看板を探して歩く
たしか手風琴とかいった
ママは函館の人で詩人
うちの喫茶店の常連で
親父とも古いつきあいだった
それで親父も連れて飲みに行ったのは40年前
あれから40年というセリフ
生きていても高齢で
店なんかないだろう
Yumiという店もあった
ママが白血病で死んだ
わたしの中学の後輩で
どこかに連れて行ってと
すがるようにチークを踊った
それからまもなく死亡広告欄に名前を見つけた
細雪という小料理屋の看板も
消えている
どうしているだろうか
みんなみんな年もとり
店はあっても閉めている
人だけがいない夜の町を歩いて
どこに行った
みんなみんな応答せよと
酔っぱらって叫んでいた
ふるさとは友人たちも次々に亡くなり
いまは生き残っている者らで淋しく飲んで
懐かしい小学校に通った道だよ
大工町寺町米町仏町老母買ふ町あらずやつばめよ
と同郷の寺山が歌った町
彼も同じ学校に通い
ここを歩いた
タクシーも走らない
酔客はわたしだけ
さびしいなあ
ここはあの世に近い仏町
TOP