おれを呼ぶな
仲のよかった飲み仲間で文学同人の
二人が同時に亡くなった
おれが上京するときに
行くのか行くなと止めにきた二人
おまえがいないと寂しいぞ
振り切って出稼ぎにきて10年
それから親友二人は癌になり
脳梗塞と心筋梗塞
酒とタバコと不摂生であっさりと
あの世行き
桜咲く前の青森で
最後の電話一本残して死んだなんて
どうした 二人道ずれで
おれだけ残して死ぬなんて
スマホの録音に
いつまでもあいつの声が残っている
手紙でさよなら言わないで
電話なら一度きりと歌がある
いまは電話も録音で残り続け
何度も聴いては泣くから
死にそうにない元気な声じゃないか
あっさりと逝くなんて
小説のように信じない
いまだにどこかにいるようで
みんな仲間も悲しくないと
とてもそれが嘘のようで
なにかやあやあと出てきそうで
みんなが二人のことを思いつつ
今日の宴会では酒を飲んだ
次はおれかと思うから
おれをあの世から呼ぶなよ
三人仲良く逝きたくはない
まだやることがあるからな
おまえたちの追悼号を出すまでは
おれの役目は終わらない
骨を拾い作品の骨も拾い
みんなして供養の思い出を本にするまでは
おれは生きて偲ぶのだよ
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