総武線
あれはたった三年半前のこと
千葉で暮らしていたのが
いまは遠い異国の話に思えるほど
わたしは忙しすぎた
東京に出るのさえままならないほど
ともかく走って走って前が見えない
後ろを振り向く暇もない
そんなときにお呼びがかかり
千葉の従兄たちと食事会と
久々に総武線に乗る
君津行か
それはどれも海に行く
いまは神奈川で都心を越えて行くのが
途轍もなく遠く思える
亀戸の義姉も来る
新小岩には長男が暮らしていた
市川の義兄が今日は料亭を予約した
その先の船橋 津田沼とアナウンスも
そうだそこで途中下車して
買い物なんかしていたな
と
わたしの好きな下町の錦糸町で降りて
駅前のスカイツリーが見えるマックで
いまこれを書いている
通勤していたときは夜勤の仕事帰りに
ここに寄って朝のコーヒーと創作
本も読んだ窓辺からは
駅前広場と総武線が通る景色
わたしはどこに行くのか
いまも旅の途上のように
揺れ動き定まらない
従兄姉たちは言う
人生の半分は動かなかったと
それなのにわたしときたら
二年に一度は引っ越しで
新しい街で暮らしている
いま どこにいるの? と
メールがよく来ていた
風来坊だから糸の切れた凧
どこへでも飛んでゆく
それでもたまには総武線で
みんなに会いに来るから
気楽な老後を笑う
従兄は老人ホームに入ることを考えて
エンディングノートも書いていた
なのにわたしはまだまだ
遊びは現役でこれからも
TOP